バックオフィスをアウトソーシングして業務効率化!ベンチャー企業が業務委託・外注する際の注意点も解説

2024/01/19更新

監修:三浦 崇生

スタートアップ、ベンチャー企業が急成長して事業フェーズが変わっていく時に必ず乗り越えなければならない壁がバックオフィス業務の整理と効率化です。特に上場を目指す企業であればなおさらその重要性が高いといえます。

しかし現実的には・・・

事業にとって生産的とはいえない作業であるバックオフィス業務の効率化は、後回しにされてしまっています。また、バックオフィス業務の優先順位が上がらず、改善されないまま事業が進んでいくため、従業員のストレスも溜まっていきます。

ある企業の調査データによると、経理、財務、人事、労務、総務などバックオフィス関連の各部署において、全体としてやりがいを感じている人が半数を満たしていないにもかかわらず、役職があがるに連れて満足度は上がっていると報告されています。

つまり、現場には不満があるものの管理する側の人が現状の課題を感じていないため、業務の改善が遅れてしまっているのです。

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また、業務の課題が具体的に認識されていないことに加え、バックオフィス業務に専任を採用できないことも課題となっています。人員を割くことができずに業務が特定の人に偏ってしまうため、課題を解決するための時間さえ確保できないでいるのです。

2022年におこなわれたバックオフィスの苦労調査によると、春季の組織改変の時期の業務にストレスを感じている人は全体の8割におよんでおり、その理由は膨大な業務量と成果の見えない業務であることが挙げられていました。

実際に、半数以上の人が45時間以上の残業を強いられており、多くの人が業務マニュアルの整備やワークフローの効率化を期待しているとアンケートに回答しています。

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バックオフィス業務がおろそかになる、優先順位が上がらない、バックオフィス業務に専任を採用できない、リソースを割くことができないという状況です。

昨今、様々なアウトソーシングを請け負う会社が増えてきていますが、スタートアップ、ベンチャー企業がバックオフィス業務をアウトソース、委託、外注する際に注意すべき3つのポイントを挙げました。

注意点①作業だけでなく、作業ルールも設計できるか?

例えば経費精算や月次決算などのノンコア業務が煩雑である場合、その作業をアウトソースすることは簡単ですが、それだけではいつまでもその作業は続き、事業成長とともにますます作業量が増えていくことで外注コストも上がってしまいます。

それよりも大事なことは経費精算や月次決算のルールやスケジュール、ワークフローを設計すること。その設計ができていれば作業量が増えても効率的に業務を回すことができたり、内製で対応できることが増えてきます。

その作業は何のためにやっているのか?その業務は事業のどの部分と連動しているのか?を見極める力、そういった経験が豊富なアウトソーシング先を探すことが重要です。

外注のメリット:ノンコア業務を任せることができる

バックオフィス業務を外部に委託する最大のメリットは、ビジネス運営におけるノンコア業務を自分達でしなくて済むため、自社の人材リソースを事業成長や事業拡大に向けて投入できることです。

経費の精算や決算といった業務はバックオフィスやノンコア業務と呼ばれ、会社に利益をもたらす業務とは異なり非生産業務とも呼ばれています。

バックオフィス業務は事業を運営していくために欠かすことができない重要な業務ではありますが、作業が直接会社に利益をもたらすことはありません。特に会社の利益に繋がる仕事をしなければならない経営陣などがバックオフィスを兼業することは、会社としてはあまり良い事業体制であるとは言えないでしょう。

バックオフィス業務を外部に委託することで、経営陣がより生産的な仕事に集中することができます。

外注の課題:任せるのは良いが、事業成長とともにコストが上がる

バックオフィス業務を外部に任せることで、経営陣は事業の根幹となる業務に集中することができるのですが、それだけで全てが解決できる訳ではありません。なぜなら、事業は日々成長していくため、それにあわせて必要なサポート業務もアップデートする必要があるからです。

人数が少ない時であれば、紙の書類でも十分管理ができていて、エクセルのみでも資金管理・顧客管理が間に合っていたかもしれません。しかし、人が増えればその分管理するための作業が増えますので、サポート体制や作業手順の改善をおこなわなければ、作業量は一方的に増加するだけになってしまいます。

作業量が増えれば当然ながら外注費も大きくなりますから、場合によっては自社で専任の人材を育てた方が安く済んでしまう場合もあるでしょう。事業規模が大きく成長し始めたら、バックオフィス業務に対する効率化も検討する必要が出てきます。

外注のポイント:ワークフローの設計をすること

事業の成長とともに外注費が増大してしまわないよう、外注する業務のワークフローを設計して、効率的な作業ができる体制を整えることが大切です。

ワークフローとは、仕事(ワーク)の流れ(フロー)を意味する言葉で、ワークフローを図解するなどして作業工程を洗い出すことで、意思決定までに必要な業務とそうでない業務を選別することができます。事業が大きくなると、同じ作業を何度も繰り返していたり、同じ作業を他の部署でもしていたりなど、業務の無駄が各所で発生してきます。

作業手順や業務に使用するツールを各部署で統一することで、業務を効率化することができ、自社の中で解決できることも増えるはずです。

ワークフローや作業ルールの設計をすると、どの業務を外注かすれば良いかが明確になりますので、自社で対応できないような専門的な業務だけを外注するなど、必要なものに必要なだけ支払うようにすれば、作業の効率化と費用の節約で相乗効果を得られるはずです。

外注の具体的な選び方:ワークフローの設計にも目を向けられる外注先を選ぶ

外注先を選ぶ際は、指示された作業をこなすだけでなく、作業の根底にある作業のルールやワークフローの設計にも目を向けられる業者を選ぶようにしましょう。

理由としては、上述の通り、事業が拡大するにつれて無駄な作業が各所で発生するようになるからです。事業の成長に合わせて作業内容のアップデートを提案してくれる業者、事業の成長を見越して将来的な作業内容の改善方法などを提案してくれる業者は、作業のルールやワークフローの設計にも目を向けられる業者といえます。

また、バックオフィスの専任の人材を確保できずにバックオフィス業務の改善を見送っている、という企業様も多くいらっしゃいます。専任人材が自社にいなくても、バックオフィス業務の改善にすぐに取り掛かれる点は外注するメリットと言えるでしょう。

注意点②作業依頼の要件を定義してディレクションできるか?

バックオフィス業務は経理や人事、労務、総務など多岐にわたり、時には専門性も必要になります。煩雑な作業を効率化したい、アウトソースしたいというニーズがあっても「具体的にどのように依頼すれば良いのか?」で躓いてしまい、作業の依頼が曖昧になることでかえって手戻りが増えて作業が増えるといった悪循環に陥る危険性もあります。

外注先のスタッフがムダなく効率的に作業ができるよう、作業者目線での要件定義やディレクションができるか?は実際に業務を回していく上では非常に重要になってきます。そういった経験が豊富な委託先を見つけることがもう一つのポイントです。

外注のメリット:経理・人事・労務・総務などあらゆる事業を外注できる

バックオフィス業務には経理・人事・労務・総務・営業事務などがありますが、そのいずれの作業も外部業者へ委託することができます。

経理業務としては会計処理・請求処理・決算処理などがあり、人事業務としては入退社手続き・勤怠管理・従業員情報管理など、総務の業務としては給与計算・年末調整・福利厚生など、営業事務としては電話対応・データ入力・資料作成などがあります。

営業事務は雑務が中心になるため社内でも十分対応可能ですが、他のバックオフィス業務については専門知識が必要になり、人材を確保するのにも苦慮するケースが多いですので、委託業者へ外注することで負担を大きく減らすことができるでしょう。特に、給与計算などが必要な総務についての処理については多くの企業が悩まれており、委託の相談が増えています。

外注の課題:専門性のある作業のため依頼するのがすでに難しい

バックオフィス業務の委託についての相談が増えている理由としては、給与計算や年末調整には専門知識が必要な作業が多くあるからです。

自社では対応できない分を、専門的な知見のある業者に依頼をします。ただし、依頼する業者を誤ると、時間を節約するために依頼をしたのに返って余計な作業が増えてしまう可能性もあるので注意してください。誤った業者選びというのは、依頼された作業を着実にこなすだけの業者に依頼することです。

作業をこなしてくれることは決して悪いことではないのですが、自社に専門知識を持つ人材がいない場合、業者への指示が曖昧になってしまいます。明確な指示ができなければ、イメージしていたものと異なる成果物が業者から返ってきてしまい、結局また自分たちで修正していくことにもなりかねません。最も欲しいサポートは自社の業務に最適な作業方法を一緒に検討してくれるサービスのはずです。

外注のポイント:作業者の目線で要件定義やディレクションをする

自社に専門的な人材がいなくても効率的に業務を外注していくために、作業者の目線に立った業務の効率化を検討することが大切です。要件定義で必要な作業を洗い出し、効率化に向けて正しい方向に導いてくれるディレクションをできるかが、外部業者に委託する際のポイントになります。

要件定義を正しく進めていく手順としては、ヒアリングをおこない、必要な作業と希望する作業を細かく区分けし、依頼者と業者との間で誤解が生まれないよう要件定義書を作成します。口頭ではなくテキストや資料に残しておくことで、依頼者としては指示する業務をしてもらえているのか、業者側としては指示以上の作業を要求されていないかを明確にすることができます。自社に専門人材がいなくても適切な業務委託ができるように、自社の作業者に寄り添った作業をしてくれる外注業者を選ぶようにしましょう。

外注の具体的な選び方:ディイレクションの経験が豊富な外注先を選ぶ

外注先を選ぶ際は、ルールに則った作業を単純にこなすだけでなく、自社に専門人材がいなくても効率的な業務に導いてくれるかを確認します。改善方法やツール導入なども提案してくれるような、ディレクション経験が豊富な業者を選ぶようにしましょう。

その理由としては、繰り返しになりますが、自社に専門人材がいない場合は業者への指示が曖昧になってしまうからです。曖昧な指示を言葉そのままに受け取って作業に進んでしまうと、自社での確認や修正で返って業務量が増えてしまう可能性があります。自社の要望を汲み取りながら最適な業務フローを構築し、必要なツールなどがあれば導入提案までしてくれるディレクション体制が整った業者を選ぶようにしましょう。

注意点③どこまでハンズオンで対応できるか?

特に創業期のスタートアップ、ベンチャー企業は日々の業務や市場の変化が激しいため、バックオフィス業務の実態や問題を口頭で説明したり、文字で説明してもどうしても伝わりきらないことが多くあります。そこで、実際にその会社に行って業務の実態を目で見て把握するという行動が非常に重要になってきます。

大抵のアウトソーシング先の企業ではそこまで対応することは少なく、具体的な作業指示を待つというスタイルが基本です。スタートアップ、ベンチャー企業特有の事情をよく理解し、できるだけハンズオンでバックオフィス業務全体を俯瞰し、効率的に業務設計できるかどうか?も外注パートナーを選定する際の大事なポイントとなります。

外注のメリット:業務に精通した専門家がバックオフィス業務を代わりに進めてくれる

バックオフィス業務を外注するメリットは、自社に専門人材がいなくても、業務に精通した人材が代わりに業務を遂行してくれることにあります。新たな人材を確保するために募集をかけ、応募資料に目を通し、面接をする手間が省けます。さらに、人材を採用した後にかかるコストも節約できるなど、外注で得られることは豊富にあります。

採用後にかかるコストとしては、給与の他にも社会保険料や設備費用、福利厚生や研修費用など、専門人材でなくても多くの費用がかかっていることがわかります。退職となればそのための手続きが必要になりますし、新たに採用するためのコストがまた新たに発生します。外注であればすでに教育を受けた専門人材に業務を任せることができるので、上記のようなコストや時間を節約することができます。

外注の課題:口頭やテキストだけでは自社の課題を外注先に伝わらない

自社に専門人材がいなくても専門的な業務を依頼できるのが外注の特徴ではありますが、自社の課題を伝えるのは自社の人材になりますので注意すべき点はあります。それは、自社の課題を外注先に明確に伝えることが難しい点です。

業務を外注する場合、自社の課題を認識して業務を依頼するのは社内担当者になります。社内の担当者に十分な専門知識がない場合、自身で社内の本当の課題を見つけ出すのは難しいですし、業務指示も曖昧になってしまうことでしょう。自社業務の課題解決を担当者任せにするのではなく、依頼する業者を巻き込んだ課題解決を目指すことが大切です。

外注のポイント:現場にあるリアルな課題を確認・解決する必要がある

課題解決の具体的な方法としては、専門知識のある外注先のスタッフに、自社の現場を実際に確認してもらうことです。プロの目で自社業務の流れを俯瞰的に見てもらうことで、自分達だけでは見つからなかった課題を解決へと導いてくれるはずです。

バックオフィス業務の外注を依頼する際は、業務に入る前に、実際の作業現場を見ながら作業のルールやワークフローを構築してもらえるかを確認するようにしましょう。現場の状況を確認せずにパッケージサービスの提案のみをする場合は要注意です。プロの目により新たな課題が見つかれば、課題解決のための作業を業務フローに組み入れて、再度自社でおこなうか業者に依頼するかを判断し、業務の効率化を進めていきます。

外注の具体的な選び方:スタートアップの事情に精通し、俯瞰した視点から業務設計ができる業者を選ぶ

外注先を選ぶ際は、バックオフィス業務になかなかリソースを割けないという創業期のスタートアップの事情を考慮してくれ、一部署だけでなく全体の業務フローを確認しながら作業ルールの設計をしてもらえるかを確認します。

また、ハンズオンで実際の現場でやるべきことを明確化してくれるかどうかもポイントになります。バックオフィス業務を外注する際は、作業ルールの設計もしてもらえるか、要件定義などのディレクションもしてもらえるか、ハンズオンで業務を進めてくれるかをチェックするようにしましょう。

なお、業務を委託する際は自社情報を業者に提供することになりますので、秘密保持契約の締結や情報漏洩時の対応も確認し、情報漏洩の対策も忘れずに実施してください。

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございます。もし下記のような問題があてはまる場合は要注意です。

・経営陣がバックオフィス業務に多くの時間を割いてしまっている

・スタートアップ、ベンチャーのバックオフィスにマッチする人材がいない

・事業成長に伴い、バックオフィス業務の効率化が急務である

こんな問題を抱えている場合は、スタートアップの事業運営に必要なバックオフィスの計画立案から体制構築まで、丸ごとサポートできる弊社ipatnersにまずはお気軽にご相談ください。貴社の成長フェーズに合わせて経理~総務までバックオフィスをカバーする専門チームが丸ごと対応いたします。

この記事の監修

ipartners株式会社 代表取締役社長
三浦 崇生

スタートアップ企業を中心に、月次決算を行うことができるバックオフィス体制の構築・業務支援と複雑・大量なバックオフィス業務をシンプルにするツールの開発を行っている。
経理/財務・人事(労務・採用)・総務・営業管理・経営企画など様々な業務の立上を行った経験を持つ。

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