上場準備に向けて必ず超えなければならない「月初の経理業務」の壁

新規上場(IPO)を目指すにあたって、超えなければならない壁のひとつが「月初の経理業務」です。上場基準を満たすために、また、株主報告準備に必要なために、月次決算は毎月初3営業日~5営業日で締める必要があります。

しかし、仕入先からの請求書が届くタイミングや経費精算書が経理部門に届くタイミングによっては、月次決算を5営業日以内に締めることが難しい場合もあるでしょう。そのため、新規上場を目指している企業の経営者やCFOの方の中には、月次決算業務の効率化にお悩みの方も多いのではないでしょうか。

この記事では上場準備に入っている企業や、これから上場準備を本格化するN-3期(直前々々期)の企業向けに、月初の経理業務を効率化する方法を紹介します。新規上場に対応できる経理体制を構築したい方は必見です。

1.なぜ月次決算には壁があるのか

そもそも、なぜ月次決算には壁があるといわれるのでしょうか。月次決算は、企業が事業活動の成果を正確に把握し、経営判断をする上で欠かせない作業のひとつです。また、株式を一般公開するにあたっては、投資家に正確で公平な判断材料を与えるという面からも、月次決算の正確性はもちろん迅速性も求められます。

この正確性と迅速性が、上場を目指すスタートアップやベンチャー企業のバックオフィス体制では実現が難しいため、月次決算に課題を抱えている上場準備企業が多いです。さて、月次決算に壁が存在する具体的な理由としては、次の3点が挙げられます。

  • 月初に仕入先からの請求書が集まるタイミングが遅い
  • 月初に社内から経費精算が集まるタイミングも遅い
  • 月初のみ瞬間的に人を増やしたいが正社員の数は限られている

それぞれの課題について考えてみましょう。

1-1.月初に仕入先からの請求書が集まるタイミングが遅い

月次決算の締め作業において、仕入先からの請求書が集まるタイミングが遅いことは大きな問題となります。仕入先からの請求書は、月末締めの場合は支払いサイトにかからず月初に届くことが一般的です。しかし、経理業務の現場としては、全ての仕入先から同じタイミングで請求書が集まることなどないと感じている方も多いのではないでしょうか。

たとえば、請求書が郵送されてくる場合、送付先の地域によって届くまでの日数に差がでます。昨今ではメールや経理システム上で請求書を発行する企業も増えていますが、これらの請求書発行方法が入り乱れることで請求書受取タイミングには5日以上の差が生まれることも少なくありません。

また、仕入先によっては請求書の発行が遅れたり、ミスがあったりすることもあるでしょう。社外の組織が関わる部分なので効率化が難しいこともありますが、仕入先に対して請求書発行のルールを伝えたり、請求書管理を電子化したりするなどの効率化を地道に進める必要があります。

1-2.月初に社内から経費精算が集まるタイミングも遅い

月初に社内から経費精算が集まるタイミングが遅いことも、月次決算の締め作業を妨げる壁となります。多くの企業では、出張や会議、販促活動などで発生した経費を精算することが月末になってから行われるため、月初にはまだ経費精算が完了していない場合があります。

月次決算を早く締めるためには社内でのタイムリーな経費精算処理が欠かせませんが、精算締切を過ぎてから対応する社員が存在することも事実です。社内の精算処理を早める方法としては、経費精算の締め切りを月末から数日前に繰り上げることや、経費精算のオンライン化などが考えられます。

1-3.月初のみ瞬間的に人を増やしたいが正社員の数は限られている

仕入先からの請求書や社内からの経費精算処理が月末月初に固まるため、とくに月初はリソース不足になることが多いです。そのため月次決算の現場では月初のみ瞬間的に人を増やしたいニーズもありますが、現実的には正社員の数が限られているという課題があります。

月次決算時の瞬間的な人手不足を補うためにアルバイトやパートタイマーなどを採用することも考えられますが、教育コストやマネジメントコストを考えると、企業の大きな負担になることは否めません。また、アルバイトやパートタイマーの採用業務は経理部門だけではなく人事部門も絡むことになり、スタッフの入退社負荷が増えることはデメリットといえます。

2.月次決算を早める方法

さて、ここまで「月初の経理業務」の壁について紹介してきました。上場基準を満たす経理業務を実現するためには、ここまで紹介した課題を解決しなければなりません。ここからは、月次決算を早める方法として3つの解決策を紹介します。

  • 社内の意識改革
  • スムーズな月次決算体制の構築
  • バックオフィス業務の外注化(経理のアウトソース)

2-1.社内の意識改革

まず、社内の意識改革が不可欠です。月次決算は経理部門のみでは完結しません。仕入先からの請求書を経理部門に回す調達部門や、経費精算手続きを行う営業部門など、会社組織全体が月次決算に関わっています。そのため、月次決算を早めるためには経理部門だけでなく全社員に月次決算の重要性を周知徹底することが重要です。

2-2.スムーズな月次決算体制の構築

月次決算に対する社内意識の改革と合わせて、経理部門としてはスムーズな月次決算体制を構築しなければなりません。経理部門や関連部署との連携を強化したり、締め作業の業務プロセスを見直したりすることで、月次決算のスピード化を目指しましょう。

場合によっては適切なシステムの導入やデータ管理にも注力する必要があるかもしれません。経費精算、売上・販管費管理、支払処理のDX化・デジタル化による対応は、月次決算の迅速化には不可欠です。

2-3.バックオフィス業務の外注化(経理のアウトソース)

月次決算時のリソース不足に対応するために、バックオフィス業務の外注化(経理のアウトソース)も視野に入れるとよいでしょう。月次決算には経理部門や財務部門、場合によっては各部門の管理職や経営陣も関わっていることが多いのではないでしょうか。管理職や経営陣など、いわゆるプロフィットセンターの社員が経理業務などのバックオフィス業務に多くの時間を割いてしまっている状態は、機会損失といえます。

このような課題の解決策としては、上場準備期の会社に即した対応ができる組織に経理業務のアウトソースがオススメです。

3.経理のアウトソース化によって得られるメリット

月次決算を早める方法としては社内の意識改革、スムーズな月次決算体制の構築も不可欠ですが、上場準備期の企業の場合は経理業務をアウトソース化することを積極的に検討しましょう。経理業務をアウトソース化することによって、次のようなメリットを得られます。

  • 月初の決算業務時のみ一時的に作業人数を増やせる
  • 正社員は作業ではなく仕組みの改善にフォーカスできる
  • 従業員のモチベーションアップにつながる
  • 教育コストをかけずに月次決算の仕組み作りが可能
  • 経理業務の専門家の知見を社内に取り入れやすい

それぞれ詳しく解説します。

月初の決算業務時のみ一時的に作業人数を増やせる

経理業務をアウトソース化すれば、月初の決算業務時のみ一時的に作業人数を増やすことが可能です。また、コストセンターのリソースをアウトソースによって変動費化することで、財務基盤の改善にもつながるでしょう。

また、アルバイトやパートタイマーを雇う場合と異なり、経理部門だけでリソースを管理できることもメリットと言えます。

3-1.正社員は作業ではなく仕組みの改善にフォーカスできる

経理業務をアウトソース化することで、正社員は作業ではなく仕組みの改善にフォーカスできることも大きなメリットです。上場準備にあたっては、月次決算以外にも対応しなければならない業務が少なからず存在します。スタートアップやベンチャー企業が上場する場合は、新たに構築しなければならない仕組みも多いでしょう。

正社員は主幹事証券や証券取引所からの要請に応じた仕組み改善にフォーカスする環境を整えることが、IPOへの近道かもしれません。

3-2.従業員のモチベーションアップにつながる

経理業務のアウトソース化によって正社員が仕組み改善にフォーカスすることは、従業員のモチベーションアップにつながる効果も期待できます。経理業務は特性上、ルーチンワークが多く含まれます。しかし、単純なルーチンワークはスタッフのモチベーションを下げ、業務の効率性を低下させることも少なくありません。ルーチン化できる定型業務はアウトソース化し、正社員は仕組み作りをメインに対応することで、優秀な人材の離脱を防ぐ効果も期待できるでしょう。

3-3.教育コストをかけずに月次決算の仕組み作りが可能

教育コストをかけずに月次決算の仕組み作りが可能なことも、上場準備期の企業に経理業務のアウトソース化がオススメな理由のひとつです。上場準備に係る月次決算の仕組み作りは簡単ではなく、上場経験のない社内リソースだけで構築するのは至難の業といえます。

しかし、アウトソース先に上場準備企業の月次決算構築経験のある会社を選べば、IPOスケジュールに合わせて月次決算の仕組みを作れます。ただし、社内でのノウハウ蓄積もある程度は必要なので、アウトソース先を選ぶときはハンズオンでサポートしてくれる企業を選び、社内スタッフと並走させると良いでしょう。

3-4.経理業務の専門家の知見を社内に取り入れやすい

経理業務のアウトソース化では、専門家の知見を社内に取り入れやすいことも重要なポイントです。アウトソース先の専門家は、複数の企業の経理業務を手がけているため、幅広い知識と経験を有しています。社内の人材だけでは得られなかった知見も、アウトソース先の企業からのアドバイスによって導入できるかもしれません。

とくに外部の専門家が第三者の視点から業務を改善することで、経理業務の効率化が加速する効果も期待できます。

4.月次決算などのバックオフィス業務をアウトソース化するデメリットはあるのか

月次決算などのバックオフィス業務をアウトソース化することは、多くのメリットをもたらしてくれます。しかし、アウトソース化を進める前にデメリットについても把握しておきましょう。

まず、アウトソースに伴ってコストが発生します。現状のスタッフのみで月次決算を行うよりは費用負担が増えるため、アウトソース化によってどれだけの業務改善が見込めるかは慎重に検討しましょう。

また、アウトソース化に伴う情報漏洩リスクも忘れてはいけません。昨今は様々なクラウドソーシングサービスで経理業務を外注することが可能ですが、見ず知らずの他人に経理情報を開示することはIPOを妨げる情報漏洩問題につながりかねません。そのため、アウトソーシング先はIPO準備の経験がある、信頼できる企業を選ぶべきです。

さらに、アウトソーシング先とのコミュニケーションに問題があると、月次決算の締め作業に余計に時間がかかるケースもあります。そのため、アウトソーシング先の選定時には連絡体制の構築方法にも配慮すると良いでしょう。

5.上場準備期の経理業務構築はipartnersへお任せください

上場準備期の経理業務構築は、初めてIPOを経験するスタッフには簡単ではない作業です。

ipartnersは経験豊富な弊社専門スタッフがハンズオンでスムーズな月次決算体制の構築をサポートします。バックオフィス・月次決算構築を丸ごとサポートするので、月次決算に壁を感じている企業には最適なサービスです。

また、ipartnersでは月次決算以外にも、経理・財務・人事労務。営業管理から総務まで、IPO前の企業が抱えるバックオフィス業務を専門チームが総合的にサポートしています。

お問い合わせいただいたあと、具体的な業務設計について現状をヒアリングさせていただきながら最適な仕組みをご提案します。業務設計提案の段階でNDA(秘密保持契約書)を締結するなど、情報管理の徹底が求められるIPO準備中の企業様にも安心してお問い合わせいただけます。

業務設計提案の後は、ヒアリング内容、業務設計、ご予算に合わせた専用体制を準備し、業務改善システムの新規導入を目指します。プラン開始後は各種クラウドシステムを利用したリモート業務を行いつつ、必要書類の回収・確認のために週1~2回程の訪問を予定しているので、経理スタッフと密に連携した対応が可能です。

一度オンラインMTGで相談したいという方には無料トライアル診断プランをご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。