その経理業務の本当に大変なところはどこ?~作業効率化のフレームワーク「ECRS(イクルス)」~

近年、コロナ禍もありバックオフィスはリモート化が進んでいます。そうした中で、書類のPDF化やツールの導入など、情シス部門や該当のバックオフィスの皆さんは「大変だ」と感じていらっしゃるのではないでしょうか。

先日お引き受けした事例も交えて、事務作業の「大変だ」「難しい」の正体と改善策についてまとめていきたいと思います。

■事務作業は「作業」が多くて大変!

先日お引き受けしたお客様の事例ですが、とにかく作業が多くて大変でした。

なんと1月決算・3月末までに申告をしないといけないにも関わらず、ご依頼いただいた3月前半、まだ仕訳1つもされていなかったのです。

しかも領収書はすべて紙。弊社はBPOでリモート経理のサービスを提供していますので、一度すべてPDFに取り込んでからでないと作業に取りかかれませんでした。

過去1年間分の領収書を約4,500枚、朝9時から夜2時までPDF化の作業をし、6日間かけて完了させました。(今となっては良い思い出です。)

●本当に大変だったことは??

経理に限らずバックオフィスのDX推進などは、

上記のような作業が発生します。

リモートワークやDX、業務の外注でさえ、今やデジタル化が必要不可欠です。

しかしやはり、これが面倒臭い!書類のPDF化が大変!!

PDF化は大変ではありません。複合機やスキャナーに通したら、後は機械がやってくれます。

本当に大変なのは、PDFにしたデータをダウンロード、リネームして、所定のフォルダに入れるという工程が大変なんです。

ただし、実はこうした作業もOCR(光学文字認識)のあるスキャナを使えばほぼ自動で行ってくれたりします。

適切に投資をすれば、バックオフィスの「大変」も「難しい」も、意外と解決できたりするものです。

■適切に投資をするには?

「大変だ」「難しい」というのは事務作業で良く言われます。だからこそ、世の中には様々な便利ツールであふれかえっています。

こうした便利ツールは、どれも便利で有用なモノばかりですが、現場の本質的な課題に則していなければ、効果半減・使いこなすことはできません。

投資をしても現場の課題とミスマッチが起こるのは、作業目標と作業工程が混同されてしまっているからにほかなりません。

作業工程をしっかり分解し、各工程を目標に向けて最適化することでこのミスマッチは回避できます。

今回の例でいえば、2週間以内に決算まで行うという作業目標があります。

それに対し、作業工程としては「4,500枚の領収書をPDF化」し「そのすべての仕訳」を行い、「会計ソフトにインポート」するといったことが挙げられます。

PDFが大変なら、複合機からやめてちょうどよいスキャナーを準備するという風にすれば、簡略化・高速化・自動化が可能です。

こうしたまとめてできること等を考えるのに、とっておきのフレームワークがあります。

■作業効率化のフレームワーク「ECRS(イクルス)」

ECRSとは、効率化に必要な考え方の頭文字をとったフレームワークです。

E=Eliminate=「排除する」

C=Combine=「統合する」

R=Rearrange=「整理する」

S=Simplify=「簡単にする」

の4つになります。

この4つは業務改善効果の高い施策の順番と考え方を示したものです。

一つ一つ見ていきましょう。

●E=Eliminate=「排除する」

「排除」とは、無駄な作業を除去していくことです。

ここで大切なのは、「排除しても問題ない行程か」を吟味することです。

単純に慣例化しているような工程や、誰も確認しない報告書などは、明らかに無くしてしまったほうが良いでしょう。

しかし、チェック項目を減らすといったものは、慎重に検討したほうが良いものです。削ってはならないものを削ってしまうと、後で不備が発覚した時の対応が大きなコストと労力となって圧迫します。

また、効果のない営業活動なども除去対象です。これを行うためには、経理体制が盤石に整っていないと難しいでしょう。

営業活動のコストは、営業マンの人件費だけではありません。交通費や広告、商談で使う資料など、その項目は上げたらきりがありません。

各施策・活動に対してどの程度コストがかかっていて、どの程度の回収が見込めるのか、数字の管理ができていないと、正確な判断ができません。

コストセンターと思われがちな経理ですが、経営判断の材料を提供することで、立派なプロフィットセンターに生まれ変わることができます。

●C=Combine=「統合する」

統合とは、類似した業務や一連の業務について、まとめて行うことで効率性を上げる方法です。

極端な例ですが、似たような要件を3人から別々に連絡をもらうより、1人から1回の連絡で、3件分の情報をもらったほうが、把握が楽だと思います。また、単純に返事をしたりする手間も減ります。

似たような業務は1人の担当者にまとめることで、専門性も高まり効率性も上がるのです。また、似たような作業なら、同じタイミングでまとめて行ったほうが効率的です。       

例えば、交通費精算は都度行うことを求められます。しかし、交通系電子カードを発行し、毎月決まった日までにその明細と営業記録を一緒に提出すれば、齟齬なく申請可能です。

BPOの活用においてもこちらのフレームワークは重要です。発注のタイミングをまとめて連絡の工数を減らしたり、似たような業務をまとめて排除できたりします。

とくに大きな企業になるほど、組織の縦割りがあり、個別のチームで同じことを行っていることがあります。こうなると伝達だけで仕事になってしまう人もいるでしょう。

適正な工数の割り振りのためにも、定期的な工程の見直しは必要不可欠です。

●R=Rearrange=「整理する」

業務を整理するというのは、統合と似ているようですが、少し違います。

具体的には、「整理」は業務の順序や手段の入れ替えを検討することを指します。

例えば経営判断のための資料作成などは、提出前に情調への確認を挟むと思います。

この時、自分の中で100点の資料を作っても、だいたいたくさんの赤入れが入るのが常です。

ですので、20点や30点の”たたき”の状態で赤を入れてもらい、修正工数を減らす事ができます。

このほか、今案で手作業で行っていたことをITツールに置き換えて、実際の作業を減らすこともできるでしょう。

前述のお客様の例でいえば、OCR(光学文字認識)のあるスキャナのような、少し高性能なスキャナを使用することで

・領収書のPDF化

・データをダウンロード

・ダウンロードデータのリネーム

・所定のフォルダに入れる

という作業を手作業から自動化に入れ替えができます。

BPOに依頼するのも一つの「整理」です。内製の工数から外注への置き換えをすることで、最終的なコストを抑えることができます。

●S=Simplify=「簡単にする」

簡単にするというのは、複雑な作業を分解・再構築することで、マニュアル化する・フローに落とし込むなどして、誰でもできるように効率化することを言います。

このほか、メールでのやり取りをチャットに置き換えることで、より手軽にコミュニケーションをとれるようにするなども含まれます。

■バックオフィスの「大変」は減らせる

ECRS以外にも、効率化のためのフレームワークは世の中にたくさんあふれています。一つ一つの方法はどれも優れたものですので、自社に合った方法を選びましょう。

その際に大切なのは、作業目標と作業工程を混同しないようにすることです。正確な目標設定ができれば、ECRSなどのフレームワークを使うことで、より効率的な手段をとることができます。

弊社ではこのような考え方、フレームワークを活用しながらお客様の経理業務・バックオフィス業務の仕組み化・効率化をご支援していますので、ご興味をお持ちいただけましたらいつでもご相談いただければと思います。