スタートアップの設立、いつがベスト? ー会社の“誕生日”を決める前に考えておきたいことー

これから事業をスタートされる方から「会社を設立するタイミングはいつか」という相談を受けました。

「会社をいつ設立するか」

起業準備を進めていく中で、意外と後回しにされがちなのが、この設立時期の選定です。

資本金や登記書類の準備などについ目がいきがちですが、設立した月から1年間が決算期となるため設立月をどう決めるかによって、

・税理士さんの対応スケジュール

・経理処理の負担

・キャッシュフローの見通し

まで、実は大きく変わってくるんです。

*決算期はあとで変えることもできます。

日本では、「4月−3月の決算期」の会社が圧倒的に多いですよね。

なぜ日本では4月−3月の決算期」の会社が多いのか?

① 学校・行政・企業が「年度」で動いているから

日本の多くの制度やビジネスの区切りは、4月〜翌年3月の「年度」で管理されています。

採用、予算、契約更新、補助金などがすべてこのサイクルで動くため、

「年度初めに設立して、1年単位で区切りたい」という企業が多くなります。

② スタートアップ支援・補助金の区切りも3月末

補助金や助成金の申請期間が「年度単位」で区切られているケースが多いため、

「新年度から申請できるように3月設立→4月稼働」に合わせる起業家も多いです。

③ 社会的にも“区切り”がわかりやすい

3月に設立して「4月から正式に始動します」と説明すると、

取引先や採用候補者にも理解されやすく、動き出しやすいのが実情です。

でも、実務的には“非効率”なことも・・・

実務面から見ると「4月−3月の決算期(=3月決算)」はデメリットもあります。

・会計事務所・税理士が繁忙期のピーク

・決算処理・確定申告・年末調整などが一斉に重なる

・設立初年度が短期決算(11ヶ月未満)になりがち

・初年度にかかる経理・税務のサポートが後回しになりやすい

つまり、「年度的には区切りが良いが、実務的には大変」という状況です。

では、「4月−3月の決算期」に続いて多い「1月−12月の決算期」はどうでしょうか?

新年が始まる1月。「区切りが良いから」「採用や営業もしやすいから」と、この時期を選ぶ人は少なくありません。

確かに心理的にはスタートしやすいタイミングですが、実務的には少し非効率かもしれません。

前述のとおり、4月−3月の決算期の会社が非常に多いため、税理士事務所や行政手続きが3月決算対応で4月~6月も引き続き混雑しているため、設立初期に十分なサポートを受けられず、経理体制が後手に回ることもあるかもしれません。

では、何月が狙い目なのでしょうか?

実務経験豊富な税理士さんたちにお聞きすると、

「8月・9月決算が一番落ち着いてスタートできる」という意見が多かったです。

この時期をおすすめする理由は3つあります。

① 税理士事務所の繁忙期を避けられる

3月決算・確定申告・年末調整など、これらがない“中間期”にあたるのが8〜9月。

新設法人のサポートに十分な時間を割いてもらえます。

② 自社ペースで経理の仕組みを整えられる

設立から数ヶ月は、

・請求書のテンプレートづくり

・クラウド会計の設定

・口座・クレジットカードの整理

など、意外と細かい準備が必要です。

バタバタしない時期に設立すると、経理の型を落ち着いて作れます。

③ 年末・年度末の混雑を避けて動ける

年末は経理も採用もマーケティングも慌ただしい時期。

8〜9月設立なら、年末には少し軌道に乗り、来期に向けた計画を立てる余裕が生まれます。

「決算期をいつにするか」も同時に考える

設立月がきまると「決算月」も決まります。

多くの企業が採用する3月決算は、税理士・会計事務所が非常に混み合うため、初年度の対応が後回しになりがちです。

一方で、8月・9月決算は比較的ゆとりがあり、初めての決算を丁寧に迎えやすいのです。

また、業種によっても最適な決算月は異なります。

・小売・EC業なら繁忙期(12月〜3月)を避ける

・製造業なら在庫が落ち着く時期に合わせる

・BtoBビジネスなら年度予算の切り替え時期をずらす

「事業のサイクル」と「会計のサイクル」を揃えることで、資金繰りの見通しが安定します。

設立時期を決めるうえで、もうひとつ重要なのが税理士さんとの連携のタイミングではないでしょうか。

「設立してから探す」では遅い場合があります。おすすめは、登記前に一度相談すること。

設立月や決算期、初期の経理設計を一緒に考えてもらうことで、

・登記書類に反映できる

・補助金や税制優遇のタイミングを逃さない

といったメリットも得られます。

会社の設立月は、ただの“日付”ではなく、「経営の立ち上がりを左右する戦略要素」です。

税理士さんと相談して、サポートが受けやすい時期を選ぶ

自社のビジネスサイクルと合う決算期を設定する

設立と同時に、経理の土台をつくる

これらを意識するだけで、設立後の半年がまったく違ってきます。

焦って4月に設立するよりも、少し時期をずらして“整ったスタート”を切る。

それも選択肢のひとつではないでしょうか。