企業において費用の大きな割合を占めるのはほぼ間違いなく人件費です。
人件費をコストカットするための一つの打ち手として、経理業務をいかにスマートにするかということが挙げられます。そのため経理業務のデジタル化に取り組むスタートアップの経営者も多いことでしょう。
しかし、月末月初めなど経理業務が多忙化する時期には、「実はあまり業務量が変わっていなかった」ということはありませんか?
ただ経理業務をデジタル化するだけでは、人件費のコストカットにつながるわけではありません。最適なツールを選択し、最適なプランを導入する必要があります。極端な話をすれば、数万円の予算をかけてシステムをアップグレードすることで、経理担当者を1人減らすことも可能です。
今回は、経理業務を含めバックオフィス業務を最適化するためのポイントなどについてご紹介いたします。
1.経理業務のデジタル化におけるメリット
経理業務をデジタル化するためのサービスは普及しており、今ではシステムの導入が当たり前となってきています。経理業務をデジタル化することによって多くのメリットが見込まれるためですが、まずはどのようなメリットがあるのか、改めてご紹介していきます。
1-1.コスト削減
経理関連の帳票は多くの種類があるため、紙ベースでの書類のやりとりには、多くのコストがかかっています。出力するための用紙やコピー機、郵送するための切手代や封かん作業、ファイリング作業や保管スペースの確保など、紙ベースでの業務では、機械や資材、工数など多くのコストを必要とします。経理業務をデジタル化に移行すれば、これらにかかるコストをすべてカットできます。
1-2.業務効率化
経理業務の専用システムを使用することで、自動での計算やデータの抽出などがスムーズに行えるようになります。またクラウドサービスを利用すれば、担当者だけでなく、関係者が情報データを閲覧できるようになり、いちいち書類の確認をしてもらうために印刷することもありません。
また入力作業も簡素化でき、処理ミスなどの発生も低減できます。
1-3.属人化リスク
経理作業は複雑な処理が多いため、経理担当の社員以外に誰も把握していない属人化している企業も多くみられます。業務の属人化は、担当者の負担が大きくなり、退職や異動の時に引き継ぎが困難、休暇を取りづらいなど、問題を多く抱えることになります。デジタル化されれば、業務内容を共有化しやすくなります。
1-4.情報漏洩リスクの軽減
経理業務は多くの機密情報を取り扱います。請求書ひとつとっても企業にとっては機密事項にあたり、経理担当者は情報漏洩にも注意しなければなりません。アナログな手法での経理業務では、煩雑となり資料紛失などのリスクも高まります。セキュリティ対策が整ったシステムを導入すれば、紙ベースでの管理よりも断然に、紛失や持ち出しのリスクは避けられるようになります。
1-5.コア業務への集中
企業の経営者であれば、経理を含むバックオフィス業務にかかる手間をなるべく少なくし、営業活動や経営業務などコア業務に集中したいと考えるでしょう。
バックオフィス業務ばかりに、専門のスタッフを抱えていては、なかなか企業は利益を生み出せません。業務の効率化を図り、スタッフに余裕が生まれればその分コア業務に集中できるようになるのです。
2.経理業務デジタル化の導入失敗事例
上述したとおり、経理業務をデジタル化することには、多くのメリットが得られるでしょう。しかしただ経理システムを導入しただけでは、最大限の効果を得ることが難しくなります。
ここでは、経理システムを導入したものの、「効果を感じていない」「反対に支障をきたしてしまった」などの、失敗事例についてご紹介していきます。
2-1.期待した費用対効果が得られない
経理業務に関しての課題を解決しようと、専用のシステムを導入し経理業務をデジタル化に移行したものの、期待していたコストカットができない、などの事例です。
「経理担当者の業務が多忙で残業が減らない」「人材の採用に難航している」「コストカットしたい」など、企業の抱える課題はさまざまです。それらを解決しようといざデジタル化に移行したけれど、費用対効果を見てみると改善したように感じられないといったケースがあります。
2-2.紙ベースからの切り替えがうまくいかない
経理業務をデジタル化することで、業務フローが大きく変更されることがよくあります。業務フロー変更のひとつにペーパーレス化があります。紙や機材のコストカットや、工数削減などの大きなメリットが見込めます。
しかし現場では長年のやり方で進める方法にやりやすさを感じ、全ての作業でペーパーレス化を図れず、一部のメンバーや一部の作業に紙ベースの作業が残ってしまうケースがあるのです。その場合、従来の方法とデジタル化した新しい方法が混在することになり、より複雑化することや、二重の手間が発生してしまうという課題が生まれてしまうのです。
2-3.他のシステムとの連携に支障が出た
企業が抱えている課題は、経理業務だけではないことが多いため、バックオフィス業務全体を見直したいと考える経営者の方もいるはずです。給与管理、財務管理などさまざまなバックオフィス業務を同時に改善できれば、より効果が生まれると考えて、他のシステムも連携できるように導入を考えるケースもあるでしょう。
しかし、それぞれ導入している既存のシステムは、メーカーやベンダーが異なり連携に支障をきたす可能性があります。データの紐付けが必要、システムの改修が必要など余分なコストが発生するなどの事態を招いてしまうのです。
2-4.自社の課題を把握せずに導入してしまった
経理業務を含め、バックオフィス業務のデジタル化サービスは多くの製品が流通しています。基本的な機能は共通しているものの、オプション機能などは製品によってさまざまです。
「製品サービスの価格が安いから」「ハイスペックな機能が充実しているから」という理由だけで選んでしまっては、失敗に終わる可能性が非常に高くなってしまいます。
「自社が抱えている課題を解決できるようなシステム」「システムを導入することでどのような効果を期待するか」など、将来的な経営戦略につながるように検討する必要があります。
コスパが良くても機能不足だったり、ハイスペックな機能が搭載されていても使いこなせなかったりして、自社の業務と製品とのミスマッチを感じてしまうかもしれません。
3.経理業務のデジタル化で大切なポイント
経理業務のデジタル化には多くのサービスがあり、プランも豊富にあります。そのため、無償プランを導入している企業も多いのではないでしょうか。
無償プランを使用している場合、最大限にサービスを利用できず、「かえって使いにくい」「ロスが生まれる」などの失敗事例につながってしまうことも考えられます。
経理のデジタル化において、大切な3つのポイントをご紹介します。
3-1.クラウドサービス
経理業務のデジタル化において大切なことは、クラウドサービスを利用することです。経理管理のクラウドサービスを利用せず、Excelや表計算ソフトを利用している企業はまだまだ少なくないはずです。
手書きで記入していた出納帳を、Excelや表計算ソフトを導入することは、出納帳のデジタル化であり経理のデジタル化とはいえません。これを経理のデジタル化だと満足していては、業務時間の削減につながっていないといった事態を招いてしまうのです。
クラウドサービスは、多くの企業でも導入されており一般的に普及してきています。すでに経理業務のクラウドサービスを導入している企業であっても、思ったように業務が改善できていない場合には、プランを見直すことも一つのポイントといえるでしょう。
3-2.インターネットバンキング
インターネットバンキングの使い方にも注目してみましょう。
経理業務で欠かせない銀行の出入金は、従来の方法では経理担当者が銀行に足を運ぶ必要がありました。その場合には、銀行の往復移動と、窓口での待ち時間などが発生していました。
インターネットバンキングを活用することで、窓口に足を運ぶことなく在宅ワークでも対応可能となり、業務の効率化に大きく貢献しています。
しかしインターネットバンキングのサービス内容はさまざまで、月額の使用料金も異なります。固定費を抑えてコストカットしようとすると、使用できるオプションなども限られてくる可能性があります。
例えば、オプションを追加することで、入出金のデータの出力がCSVでインポートが可能になるなど、経理業務の手間となる部分がスムーズになり利便性が増します。
CSVでのインポートができずに、経理担当者が自身で入力作業を行わなければならない場合には、入力ミスが発生するリスクや、ダブルチェックなどの手間などもかかってきます。
便利なオプションをつけずに固定費だけを気にかけていては、工数の部分で削減できずにあまり効果がでなかったという結果になってしまうのです。
スタートアップ企業などの場合、入出金の件数もそこまで多くないから自分で処理できるだろうと思っていても、徐々に取引件数は増えていきます。件数が少ないうちに効率のよい業務フローを画一しておくとよいでしょう。
3-3.クラウドストレージ
クラウドストレージは、帳票管理において必要な機能です。請求書をデータ化している企業も増えてきていますが、まだまだ紙ベースで管理している企業も多く存在しています。
また請求書をPDF管理に切り替えて、社内の共有ファイルに保管している企業も意外に多いことでしょう。
在宅ワークが一般的になっている一方で、経理担当者は出勤しなければならないという場合は、クラウドストレージの利用で解決を図れます。
請求書のやりとりをクラウドストレージ上で完結できるため、わざわざ出勤して紙ベースの作業をする必要がなくなるのです。
クラウドストレージの活用は、対顧客だけではなく、委託している税理士などにも活用できるようになります。決算期の税理士とのやりとりもクラウド上で完結できるため、税理士事務所への往復なども省けます。
このように、月末月初めや決算期の多忙な業務がスマート化され、経理処理の工数が削減できます。比較的穏やかな月中は、経理の人手が余っているといった人件費の無駄を省けることも考えられるようになります。
「クラウドサービス」「インターネットバンキング」「クラウドストレージ」にコストを投じれば、一人を雇用するための人件費よりも費用を安く抑えられる可能性があるのです。
無償プランで導入している場合には、メリットを最大限に享受できずにかえって使いにくい、ロスが生まれるなどの失敗事例につながってしまうことも考えられるため、アップグレードすることも検討してみましょう。
4.失敗事例を改善するには費用対効果を算出
すでに経理業務システムを導入しており、効果が得られず失敗に感じている企業においては、まずは費用対効果を算出することが大切です。
どの業務にどれくらいの時間がかかっているか、システムを導入してどれくらいの時間に削減できたのか、または増えてしまったのか、など経理業務にかかっている時間を把握することが大切です。
しかし、企業が抱える課題は、自社内だけでの解決が難しいのが実情です。「当たり前の業務と思っているため無駄に感じていない」「月末は忙しくなるのは仕方ないこと」という思考になり、課題に気づけていない可能性もあるのです。
自社内だけではなく外部から企業の業務を俯瞰することで、課題を見つけやすくなり改善策を立てられるようになります。そのため、経理システムサービスを提供している専門業者に相談してみることをおすすめします。
「ipartners株式会社」では、お客様が課題に感じている経理業務をはじめ、さまざまなバックオフィス業務を支援するサービスを提供しております。まずは、費用対効果の算出からご相談を承りますので、ぜひ「ipartners株式会社」までご相談ください。
5.まとめ
経理業務のメリットを最大限得られるようにするには、プランの見直しなども必要かもしれません。導入コストを抑えることだけを考えていては、効果を感じられないといった事態につながるリスクがあります。数万円のコストでも従業員一人分の労力に匹敵するケースもあります。現状、無償プランのシステムを導入している場合には、アップグレードすることも検討してみてください。
まずは現状の課題を把握して費用対効果を算出することが大切です。
すでにバックオフィスシステムを導入された企業様や、これから導入を考えている企業様、委託や外注といったことも検討されている企業様、スタートアップ企業様など、まずは「ipartners株式会社」にご相談ください。